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2013年 10月 22日
「あっれー?」思わず私はスットンキョーな声を出した。診察室に入って来たSさんが、知っている人だというだけでなく、34歳の彼女が、家族に肩を支えられ、両手に登山用のストックをついて、やっと歩いてきたからだ。Sさんは、建設会社にお勤めで、現場にも時々出ている。工具の入った黒い皮ベルトを腰にまいた、“男前え女子”で、ついこの間もクリニックの工事で、お世話になったばかりだ。
(転倒?骨折?) 「3週間前に突然背中がスーッとなって、足に力が入らなくなって、立っていられなくなりました。それ以来歩けないんです。総合病院で、いろいろな科を回って調べましたけど、どこも異常ないんです。もう、どうしたらいいか・・」聞けば、半年ほど前にも、スーッとなって、その時は、近所の内科で、貧血といわれて薬を飲んで治ったという。 お腹の診察をしてビックリ。ガッチリして、陽に焼けた外見とは裏腹に、Sさんのお腹は、まったく体力のない人のお腹だった。 よくよく聞くと、Sさんは、子供のころから虚弱児のうえ、冷え症で、低血圧。今でも帰宅して入浴しても、足がすぐ冷えてしまい、寝る前に、もう一度足湯をしなければ眠れないという。おまけにアトピー性皮膚炎があって、食べられないものがいろいろあること。胃腸が弱くて、小学6年までオネショをしていたこともカミングアウト。 だからこそ、足場に乗って働く男性達のような、たくましい大人になりたかったとのこと。 そんなSさん、小さい頃から憧れていた建設会社に入社したものの、そこはやはり男社会。夏は現場から帰ってくるスタッフのために、会社の冷房はガンガンに効いていた。Sさんは汗が引けると、今度はガタガタ寒くて、真夏にも関わらず、足下に電気ストーブをおいて、何とかしのいだという。そして、残暑も終わってやれやれと思っていたら、突然こんなことになったのだという。 (・・なるほど。典型的なパターンだ。半年前のは予兆だな。) Sさんのような、もともと体質が虚弱な人は、夏に強く冷えると、秋によくこんな症状を起こす。症状は多彩で、何でもアリだ。おそらく、Sさんも、足そのものが悪いのではなく、体のバランスを取れなくなって、歩くという行為ができなくなったと思われる。 江戸時代の、あの有名な指南書、貝原益軒(かいばら えっけん)の“養生訓(ようじょうくん)”では、そのへんのトコを詳しく書いてある。体質が虚弱な人には、体を冷やすことを強く戒めて、みかんも焼いて食べるようにと書いてある。クーラーなどない時代でも、これだけ気を使っていたなんて驚きだ。猛暑も、クーラーでの冷えも強い現代では、どれだけの注意が必要か。そして、不用意に過ごしていったツケがどれほど大きいか、恐ろしいばかりだ。 Sさんは、漢方薬を飲むとともに、きっちり生活改善をした。大好きなぶどうも焼いて食べたという。そのかいあって、1ヶ月後には自力で歩けるようになった。その後、一進一退をくり返しながらも次第に良くなり、半年後には、ほぼ普通に会社に通えるようになった。Sさんの夢は、足場にのって働く、男前え女子大工さん。小さい頃からの夢をもう一度実現させるため・・もう一息だね。 ![]() #
by meguro-kanpo
| 2013-10-22 19:15
2013年 10月 05日
50代後半のその男性は、目をきょどきょどさせて診察室に入ってきた。
「全身が痛いんです!」吐き捨てるように言う。医師への不信感で一杯なのが見て取れた。「全身のどこが痛いんですか?」「首も肩も腕も。背中も腰も足も・・全身です。」「整形外科でちゃんと調べてますよね?」「ええ、もちろんです。脳外科も行って、頭の中も、全身MRIもとりましたけど、異常ありません。結局安定剤をだされました。」「Eさん、もう少し具体的に、どこがどういう時に、どういうふうに痛むんですか?」「だから全身。いつもです。」「寝てる時もですか?」「だからいつもです。」 (うーん、取り付くシマもないな〜) とにかくベットに寝てもらい診察をする。(アレ?随分厚地のYシャツを着てる・・)季節は、初夏、半袖が心地よい。ところがEさんは、冬用のネルの長袖Yシャツだ。脈を診るので手をとると、氷のように冷たく、ビショビショに濡れている。「一番痛いのは、手首から手の甲にかけてです。Yシャツの袖口が手の甲に触ると、ビリビリ激痛が走って、午後になると仕事をしていられません。」「じゃ、どうして、半袖着ないんですか?」「寒くて寒くて、長袖でないといられないんです。」 (うーん、そこか〜糸口は!) 痛みの原因は多岐にわたる。なかなか特定が難しいものも多い。 くわしく診察していくと、Eさんは、確かに痛みの原因となる要素をたくさん持っていた。 体型は大柄だが、側弯があった。側弯とは、通常前後方向にS字に曲がっている背骨が左右方向にも曲がっているのだ。顎関節もガタガタだった。こうなると、頸椎にも負担がかかることは容易に想定される。こういうタイプは、直立するだけで、体はバランスを無理やりとることになるので、あちこちに不調が現れやすい。 体の中を、神経は複雑にめぐっている。特に、痛覚と温冷覚は、いっしょに脊髄の中を走行して、脳に刺激を伝える。そのため、誤作動を起こすこともあるのだ。それに、極端に冷たすぎたり、熱すぎたりする感覚は、痛みとして認識される。 Eさんは、もともとの体型的素質に、極端な冷えが引き金となって、体中の痛みを起こしているのかもしれない。 Eさんは、3年前に早期退職をして、今の職場へ移った。ミスの許されない細かい経理のチェックを一日中しているという。崖っぷちでやっとバランスを保っている体は、些細なことでバランスを崩すと、不調のドミノ倒しとなってしまう。一番目のドミノは、こんな日々の中で倒されたのかもしれない。 漢方では、こんがらがった不調の糸を、鎮痛ばかりでなく、血行や気のうっ滞を良くしたり、丁寧にほぐすように治療していく。 その後、漢方を飲み始めたEさんだが、なかなか症状は動かず、いつもガンと「全身が痛い!」の一点張りだった。しかし、さすがに5ヶ月ほどすると、「手首と手の甲だけ痛くて、他の場所は痛まなくなりました。」と初めて認めるようになった。やっと不調が整理され始めたのだ。 ドミノは、倒れる時は一気でも、改めて立てるのは、地味で気の遠くなる作業だ。でも大丈夫。漢方には、気が長〜くなる薬も入っているから。サスガだね! ![]() #
by meguro-kanpo
| 2013-10-05 14:17
2013年 09月 26日
Jさんは、二人の子供を育てながら、会計事務所をやっている多忙な女性だ。クリニックに来たのも、下のお子さんの予防接種の時で、9年前になる。注射の後、「私、オシッコがでなくて困っているんですよね。もともと日に3~4回しか行かない人だったんですけど、出産後は、水分とっても、むくむばかりで、1〜2回しか行かないんです。いろいろ調べても、異常なくて、生理前にはもっと出なくなるので、その時だけ利尿剤を使ってるんです。」と言う。
尿の回数は日に6回前後が正常だ。尿の回数が少ないという人は、大抵水分の取り方が少ないことが多い。おそらくJさんもそんなことだろうと、「利尿剤の常用はやめたほうがいいですよ〜。ちゃんと水分取って下さいね〜。」と、軽く答えた。 そんな私がびっくりしたのは、それからほどなく、目深に帽子をかぶって受診したJさんの顔を見た時だった。顔が倍くらいにふくれあがっている。瞼も頬もぷっくりふくれ、手足は赤ちゃんみたいにムチムチで、サンダルがくい込んでいる。冬なのに、靴が履けないからと、素足だ。まるで映画のゴーストバスターズにでてくるマシュマロマンといった感じ。「むくんでいる時に見せたほうがいいと思って来ました。」と言う。 普通、朝起きた時には顔が、夕方には足がむくむというのが、むくみの出方だ。それが、全身がパンパンにむくむのは尋常ではない。若い頃から甲状腺機能亢進症があるというが、薬を飲んでいてコントロールは良好だ。精密検査でもむくみの原因になるものは何もないと言う。 「舌をべーっと出して下さい。」と舌を診る。漢方では、舌には、体のいろいろな状態が表れると考え、色や形、舌苔や、裏側の静脈などをくわしく診る。色は、普通は薄い紅色でロゼワイン状。血行が悪くなると、赤黒くなって、赤ワイン状になる。 しかしJさん、赤ワインを通り越して、ナスの紫紺色だ。こんな色は教科書でも見たことがない。相当血行が悪いという証拠だ。漢方では、むくみと、血行は密接に関係していると考え、血行を良くしなければむくみは取れない。漢方薬を処方した。 ところが、Jさん、相当忙しいらしく、子供が熱を出した時くらいしか顔を見せない。もともと几帳面で、キッチリ飲んでくれているのだが、いつも、クリニックが終わるギリギリに来ては、変わりないからと薬をもらって行く。しかし、利尿剤は相変わらず続けているし、甲状腺の薬は、自分でやめてしまったらしい。 先日、早い時間にJさんがやって来た。腎盂炎になって、救急病院に行っていろいろ調べたと言う。「利尿剤をやめるようすごい怒られて、ここ一ヶ月飲んでいないんですよ。」(ほらね。やっぱり!) 診察すると、舌の色は、ナスではなく、赤ワイン状になっている。むくみは・・・ない!それどころか、すごくスッキリした美脚だ。「利尿剤なくても大丈夫ですね。むくみはありませんよ。」Jさん、むくむのが心配で、ずっと利尿剤をのんでいたが、体には自分でオシッコを出す力がついていたのだ。 マシュマロマンのマシュマロが取れたら、中から美脚美人が出て来た訳だ。映画ならエンドが変わるね。ホント。 ![]() #
by meguro-kanpo
| 2013-09-26 18:30
2013年 09月 09日
久しぶりに来院したY男さん、70才。小刻みに唇が震えている。確か、息子さんと同居するので郊外に引っ越すと、言っていたのが年末だった。
「先生、また冷え症が悪化しちゃって。」 Y男さんが、クリニックに通いはじめたのは、10年前。営業畑で大忙しだったさ中、初めて不調を自覚したのは、60才の退職目前の頃。接待ゴルフに出かけるため、日曜の早朝首都高を飛ばしていた時の事だった。その朝下痢をしたため、何となくイヤな予感がしたというが、お客さんを待たせるわけにもいかず、焦って運転していたところ、足が寒いと感じたとたん、突然動悸が激しくなって、パニック発作を起こしてしまったのだ。幸いにも、パーキングエリアが近かったため、大事に至らなかったが、それ以来、運転はできないという。 その後Y男さんは、第二の職場で、無理ない程度の仕事を始めた。漢方薬もずっと飲み続けていて、かなり冷え症も改善した。ここ数年は、年に2~3度顔を見せる程度で、パニックを起こすこともなかった。 「いやー、家が違うと、温度のコントロールがこんなに難しいとは思わなかったですよ。」元気なお孫さん達の適温は、Y男さんには、辛かったそうだ。その上、仕事も続けていて、週3日とはいえ、今まで徒歩だったのが、往復3時間の、冷房の電車通勤は、相当骨身に凍みたという。とうとう、先日から又パニックが起きるようになり、駆け込んで来たという訳だ。 夏の終わり頃になると、暑さにも、冷房の寒さにも耐えきれなくなって、さまざまな不調を起こす人は多い。めまいになったり、冷えになったり、下痢になったり、パニックになったり・・・不調が凝縮される時期といっても過言ではない。 漢方は昔の“五行論(ごぎょうろん)”という理論が元になっていて、何でも五つに分類する。五感とか五臓とか今でも使われている。だから季節も五つに分類する。五番目はいつかというと、夏と秋の間の、夏の終わり頃。まさに“今でしょ!”なのだ。この五番目の季節を長夏(ちょうか)という。 (*24節季では、夏と秋の境目は、7月下旬の秋の土用の頃だが、今頃のほうが実際的だと思う) 昔の人達が、夏の終わり頃に、あえて一つ季節を加えたのには、やはり、この時期は昔から不調が多かったに違いない。恐るべし、長夏だ。 さて、Y男さん、治ったと思っていた、冷えやパニックが再発して、すっかり自信をなくしてしまった。「機械なら、部品交換すればそれでいいけど、生身の人間ですから。冷やしすぎれば、冷えが悪化するのは当然ですよ。大丈夫。また、漢方薬しっかり飲みましょうね。」と言うと、Y男さん、ちょっと安心した顔になって、せっかく来たから、今日は針治療も受けたいと言う。 全身に針を刺した状態で、少し横になってもらうのだが、その間30分。気持ち良さそうな、大きないびきがクリニック中に響きわたって、スタッフ全員を慌てさせたのは、言うまでもない。 ![]() #
by meguro-kanpo
| 2013-09-09 19:28
2013年 08月 24日
Uさんは、ロングヘアーのスレンダー美人。一見すると、とても30代には見えないが、幼稚園にお子さんを送ったあと、仕事もこなすガンバリ屋さんだ。
そのUさん、憂うつそうに眉間にシワを寄せてこう言う。「先生、私便秘なんです。」「はあ、何日おきにお通じがありますか?」「それが・・毎日お通じは出るんですが、出るのに2時間半くらいかかるんです・・」「はあ? 2時間半もですか?」「ええ。毎朝ちゃんと出ないと気持ち悪くて、夕方お腹がパンパンに張って痛くなるんです。なので、毎朝3時に起きて、出るまでトイレにこもっているんです。」「・・それは大変ですね。お子さん起こしてお弁当作って送り出すんでしょう? 1分でも貴重な朝に、2時間半もトイレに入るのは、本当に大変ですね」私は、思わず聞き返した。戦争のような朝に、それは、想像を絶することだ。 「そうなんです!それに、2時間半入っても、スッキリしないこともあって、本当に困っているんです。」 「下剤は使わないんですか?」「私、便秘なんですけど、出る便は、下痢なんです。薬もサプリもいろいろ試しましたが、余計ガスっぽくなって痛くなるだけで出方は変わらないんです。」 これは深刻だ。これでは、下剤も下痢止めも使えない。単純に便秘だけ、下痢だけとかなら、まだコントロールしやすい。しかし、腸は第二のハートと言われるように、さまざまな原因で、さまざまな症状を来す。お腹がはったり、ゴロゴロなったり、痛んだり。こうなると、なかなか一筋縄ではいかない。 Uさんも、お子さんの世話と仕事で、きっと常に追い立てられた毎日で、トイレに座っても、“早く出さなきゃ。はやく出さなきゃ。”と自らを、追いつめているに違いない。 Uさんのお腹を触診すると、腹筋がピーンと張りつめていた。こんな人は、腸管の筋肉もピーンと張りつめていて、自然な蠕動運動ができない状態になっている。動物なら、誰しも備わっている当たり前が、当たり前でなくなっているのだ。 こんな状態には、漢方では、芍薬を含む漢方薬をよく使う。〜立てば芍薬、座ればボタン〜の、あの花の芍薬である。芍薬には、筋肉の異常な緊張をほぐす働きがある。 Uさんは、漢方を飲み始めた。徐々に排便までの時間が短くなり、それに伴って、便も普通の固さになっていった。5ヶ月もたつと、30分くらいでスッキリするようになった。 「先生、朝早起きしなくても良くなって、ゆっくり眠れるので、気持ちがすごく楽です。いろんな体調が良くなっています。お通じのことを考えない生活っていいですね!」 ・・ホント。帰り道でよく会う、トイプードルもさりげなくウンチしてるけど、それって、すごく偉大なことなのかもしれないな〜。 ![]() #
by meguro-kanpo
| 2013-08-24 17:05
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