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2013年 06月 29日
48才のTさん、初診の時からニコニコ満面の笑みで入って来た。「せんせえ〜、眠れなくて困ってるんです〜。」
聞けば、20才の時、交通事故で一命をとりとめ、その後外国へ嫁いだもののご主人が難病。結婚15年目で、待望の妊娠と喜んだのもつかの間で、死産。その後、ご主人を看取って帰国。小説よりおもしろい人生を送ったとまた笑う。 こんな大変な話をニコニコ笑いながら、しかも私の視線を放さないよう、捉えたまま話す。いたたまれなくなって、思わず私はカルテに目を落として書きながら聞いた。 そんな彼女、「ここ10年、ちゃんと眠った日がないんです。どんなに疲れていても、意識が上にあがる感じがして、目が冴えてしまいます。眠くなると、ふっと不安になって、ますます眠れません。そうなると、舌や手の平・足の裏がビリビリ痛くなり、一晩に4〜5回もトイレへ行くし、胃は痛くなるし、とにかくいつでも起きている状態なんです。」と、ますますニコニコして話す。 うーん、こんな状況が一番返事に窮する。睡眠導入剤を処方するのは容易い。でも、それをだしてもらいたくて来たんじゃないと、笑顔の奥のするどい視線は訴えている。 睡眠は結果である。眠れない原因や経過は、十人十色。 「そうですかー。それじゃ、寝るのが拷問みたいですね。」するとTさん、パッとうれしそうに「そうなんですよ!私、今となっては、主人が亡くなっていてホント良かったって思うんです。だって、もし、生きてたら横で私がこんなに、不眠でゴソゴソしてたら、主人まで眠れなくて体調崩しちゃいますものね」 (そうか・・・。ご主人を亡くしたことを受け入れられないんだ。) さらにTさんは続けた。「でもせんせい、こんな状況でも、いつか主人がフッと帰って来て、心配ないって言ってくれるような気がするんですよ。変ですね!」 そとから誰かが助けてくれるのを、待っている人を、王子さまに助けられるのを待っているシンデレラに例えて、シンデレラコンプレックスという。 Tさんもご主人が助けに来てくれるのをずっと待っているシンデレラかもしれない。笑顔は、そんなTさんの壊れそうなハートを覆い隠すベールのようなものだ。 漢方では、疲れきっているのに興奮して目が冴える事を、“虚煩(きょはん)”という。子供が疲れている時、妙に騒ぐアレである。大人の場合は、何年間もくたくたに神経が疲れると、虚煩の状態が続いて眠れなくなる。 こんな疲れきった神経には、酸棗仁(さんそうにん)というナツメの一種や、竜眼肉(りゅうがんにく)という木の実がよい。 それにしても、日本のおとぎ話には、西洋の王子さまのような人は出てこない。つくづく日本女性って、たくましくて現実的なのかもしれない。 ![]()
by meguro-kanpo
| 2013-06-29 16:35
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