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2015年 07月 14日
(どことなく見覚えのある感じだな〜)
“残尿感”と書かれたカルテと65歳のN子さんの顔を見比べながら、話を聞いていると、「・・・先生、私10年以上前、冷え症でこちらにかかっていたんですよ。」と言う。『あっ、そうでしたか〜(やっぱり)』私は、つかえが下りて、妙にほっとした。 「あの頃は、ひどい冷えで先生のお薬飲んでいたんですけど、膀胱炎になって、泌尿器科へ行ってから、漢方やめちゃったんですよ〜」 結局漢方薬は、3ヶ月くらいで中断したらしい。 「膀胱炎を何度も繰り返して、随分抗生剤も飲みましたけど、おしっこ近いのが取れなくて。泌尿器科の先生は、過活動膀胱だからと薬くれて、最後は安定剤までくれたんですけど、ぜんぜん良くならなくて。もう一回漢方飲んでみようと、思い切って来てみました〜。」 過活動膀胱とは、“尿意切迫感(急にがまんできないほど、おしっこに行きたくなる)があって、それに頻尿や尿失禁などを伴うこともある。”という病気だ。年齢が進むほど多く、80歳以上では3人に1人という高頻度。原因は、脳血管障害や脊柱管狭窄、前立腺肥大、加齢、骨盤底筋の脆弱化などが複合的に関係するが、多くは原因不明。最近はいろいろ薬が使われるが、改善しにくいケースも多い。 「もう、残尿感が辛くて辛くて。24時間尿のことが頭から離れません。残尿感にまかせてトイレへ行っていると、一日中トイレから出られないので、とにかくトイレのことを考えなくてもいいように、水分を極力減らして、トイレを我慢しているんです。」 『えっ、じゃー1日何回排尿するんですか?』 「2~3回です。朝起きても午後までいきませんし、とにかく限界まで必死で我慢します。」 『・・・・(やっぱり、冷え症のなれの果てだ)』 もちろん、冷え症のなれの果て症候群なんていう名前は、ないので。念のため。 漢方では、これら排尿障害の根底に根深い“冷え”があると考える。冷えは、始めは手足の末端など、心臓から遠い方が冷える。しかし、冷えが続くと体の中心部が冷えていき、最終的に、冷えは骨盤内に固着するが、そこにあるのが膀胱。排尿障害は、冷えが年余に渡って進行した結果、つまり冷え症のなれの果てなのだ。 これには、長年の飲水・排尿習慣の影響が大きい。人は便には敏感だが、尿には鈍感だ。飲水量が日常的に少なく、排尿回数が日に3回程度、朝起きても昼頃まで行かないという人はそれほどめずらしくはない。しかし、川の水が少ないと、よどんで不潔になるように、尿も常に更新していることが大切。いつも尿量が少ないと、若いうちは何とか過ごせても、膀胱炎などをきっかけに、残尿感が続いたり、膀胱炎を繰り返したり、日に10回以上の頻尿という中高年は多いのだ。飲水量は、最低でも日に1〜1.5l、3時間ごとくらいには、トイレへ行く習慣をつけたいものだ。 さてN子さん、漢方薬はきちんと飲んでくれるものの、恐さが先にたって、排尿できないことが続いた。 「だって先生、一回でもおしっこすると、もう、残尿感が止まらないんですもの」 水分を充分にとって、辛くても尿へ行くことと、来院のたびに説得した。3ヶ月ほどすると、やっと水を飲めるようになり、尿回数も増え、少しずつ残尿感を忘れる時間帯がふえてきた。 たかがおしっこ、されどおしっこ。“膀胱が過活動”って、長年痛めつけられた膀胱の反乱みたいだ・・・な。 [#IMAGE|b0246545_17114358.gif|201507/14/45/|mid|425|104#] #
by meguro-kanpo
| 2015-07-14 17:17
2015年 02月 05日
念のため言うが・・赤い靴症候群という疾患名はない。
友人から、夕暮れの横浜港と、山下公園の赤い靴の少女の写真をもらった。それを見ていてふと思いついた言葉なのだから。 赤い靴といえば、アンデルセン童話の、踊り続けたあの少女を思い出す・・。 K子さんが初めてクリニックを訪れたのは、もう、10年前になる。 確か始めは、お子さんの相談だった。高校生の娘さんが、朝起きられなくて困ったというものだった。でも、私には、けだるそうな娘さんより、隣で思い詰めた様子で話すK子さんのほうが、妙に気になった。 思ったとおり、程なくK子さんは一人でクリニックへやって来た。 「手がブルブルふるえて困るんです。朝は大丈夫なんですけど、仕事帰りになるとふるえてきて、買い物のレジでお金を渡す時、いつも変な顔をされてしまいます。」 K子さんは、仕事を続けながら、二人のお子さんを育てていた。ご主人は、単身赴任で、毎週末には帰って来る。近所には、要介護の母親がいて、いつも気がぬけないという。一人で何役もこなしているがんばりやさんだ。 彼女がクリニックに来ると、いつも待合室から、癖なのか、大きなため息が繰り返して聞こえてくるので、すぐにわかった。 「朝は、3時に起きます。子供達のお弁当を作って、起こしてご飯食べさせて出勤します。私が寝坊してはいられないので、何時に寝ても3時には目が覚めてしまいます。睡眠時間は3時間ちょっとです。」 私は、気持ちを落ち着けて、ゆっくり眠れるような漢方薬をだした。K子さん、薬を飲んではいるが、なかなか生活パターンは変えられない。起きないお子さんを送り迎えしたり、学校のそばに短期で住み替えたりして、やっとお子さん達が卒業。大学に入って家を出て、役目から解放されたと思ったのもつかの間、母親が骨折し、車いす生活になった。施設を探すが、なかなか見つからない。今度は、介護生活の日々。その頃から、K子さんは、食事がほとんど取れなくなってしまった。とうとう体重は40kgをきった。体力を維持する漢方薬で何とかしのいだ。 やっと施設に入所できたら、今度はご主人が病気になって自宅に帰ってきた。何度かの手術を経て、去年の春、見送った。 今、K子さんは、仕事をやめ家にいる。しかし相変わらず3時に起きる生活をしている。 「先生、私、もう眠り方忘れちゃいました。朝起きると、よほど強く手を握りしめていたのか、手の平に爪の痕がくっきりと付いています。時間のある日は、ジムに通っていますが、ランニングマシンで走っていると、体中にさむイボができて冷えてしまいます。どうしたらいいんでしょ。」K子さんは、手がブルブルふるえることはなくなったが、今も緊張を和らげる漢方薬を飲み続けている。 あまりに強く引っ張り続けたゴムのように、張りつめた緊張の糸は、緩まることができないまま、今だに気持ちは休まっていないのだ。 アンデルセンの、あの赤い靴の少女は、踊り続けて止まることができず、とうとう自分の足を切り落としてもらって、やっと止まった。 (K子さん、もう、踊り続けなくていいんだよ。止まっていいんだよ。) 今日もまた、診察室を出る背中を祈るように見つめる私である。 ![]() #
by meguro-kanpo
| 2015-02-05 19:18
2014年 11月 04日
片頭痛の日・・・といっても記念日ではない。
季節に何度か、そう呼びたい日がある。 (あれ?M子ちゃん、ついこないだ鎮痛剤だしたばかりなのに・・・。)今日は、もう、これで5人目だ。はやりの風邪でもあるまいし、朝から、片頭痛の薬を希望する人が後をたたない。でも、M子ちゃんは、鎮痛剤飲み過ぎ。これは、一言いわなくちゃ。・・『うーん』私は重いため息をついて、M子ちゃんの名を呼んだ。 M子ちゃんは、中学生の時から、片頭痛で苦しんでいる21才の医大生だ。普段はテニス部で陽に焼けた顔が、今日は血の気が引いた土気色。とても生きている人間の顔色ではない。「・・夕べから、吐き続けて、もう吐いても何もでてきません。・・頭は、ズキンズキン痛むけど、薬飲んでも吐くし。・・先生、もう、頭取ってしまいたいです・・・」息も絶え絶えな様子を前にして、私は言おうと思っていた言葉を思わず飲み込んだ。『・・そ・そっかー。それはしんどいね。』 片頭痛は起きる条件がある程度決まっている。 教科書的には、“睡眠不足・寝過ぎ・過労・ストレス・人ごみ・気圧の変動・ある種の食物、臭いetc”などで起きるといわれている。 一方、漢方では片頭痛は体の水はけの悪い“水毒(すいどく)”という状態のひとつだ。この水毒は、気圧や温度の変動に敏感に関係している。人によって、低気圧が近づいたり、または、遠ざかったり、どこの海域にくると痛むとか、さまざまだ。 だから、片頭痛の日があるのだ。 私の診察室のカレンダーには、天気が大きく変化する時を記載してある。しかし、その日に誰もが片頭痛になるわけではない。片頭痛になる要素をもっている人がなるのだ。 どんな人が要素をもっているのか? 漢方的には、片頭痛のこの水毒は、冷えと密接に関係する。この場合の冷えは、手足の冷えとは限らない。体の芯の冷えである。しかし、体の芯が冷えていても、手足に冷えの自覚がなくて、どんどん冷やしている人が多いのだ。M子ちゃんも、美脚自慢で、ミニスカートやホットパンツが多く、足を触るとビックリするほど冷たいことがある。せめて、生理前は長いパンツで、といくら言ってもどこふく風。 しかし、起きることが予想できるからこそ、片頭痛は予防できるのだ。 『M子ちゃん、習ったと思うけど、頭痛薬を飲み過ぎると、かえって薬のために片頭痛になるから、極力飲まないで。』「ええ、わかっているんですけど、今実習があってどうしても休めないんです。」『・・そうだよね〜。なりたくて病気になる人なんていないよね。しょうがなくてなるんだよね。』こうなるともう、点滴やら薬やら、とにかく痛みをとらなくちゃ。 でも、ものすごい敗北感。ものすごく悔しい!(どうしてもっと予防しなかったの!)私は、またまた言いたい言葉を飲み込んだ。 『M子ちゃん、今日は鎮痛剤だすけど、元気になったら、そろそろ冷えと水毒の治療しない?こんな事続けていると、薬で一時的に痛みはとれても、たくさんの水毒症状が合併してきて、将来大変なことになるよ。』と、何度も言い続けた事を言った。(・・どうせ、うざいと思われるだろうな。) それから半年ほどして、久しぶりにM子ちゃんがやってきた。今日はいつもの元気な顔だ。「先生、この前漢方の授業があったんです。私、漢方薬で体質改善したいです。」『そう!やっとその気になったのね。』私は妙にウキウキしながら処方箋を書いた。「ええ。だって体験のレポート提出があるんで。」(・・そうか。私がどんだけ言っても、だめだったのに、試験のかかった先生の一言で、その気になるのか〜。)とちょっと嫉妬を感じながら、(まっ、いっかー。) ![]() #
by meguro-kanpo
| 2014-11-04 20:43
2014年 08月 09日
「先生、私、自分が寒いのか暑いのか、もうわからなくて・・・」
私はカルテを書きながら、チラッとJさんを見上げた。確かに真夏とはいえ、46才という年齢で、キャミソール型のブラウス1枚は薄着だ。 「冬でもこの服です。さすがに真冬は、体裁が悪いので人前では綿ブラウスを羽織るようにしてますけど。」特に赤ら顔でもなく、太ってもいない。「でも、寒くて寒くてしょうがないんです。パンツの下には、真夏でも足首までのレギンスをはいています。膝の上には今もカイロを貼付け、毛糸のレッグウオーマーをして、靴下は3枚はいています。」そう言ってパンツの裾をたくし上げて見せた。靴下を3枚もはいているので、靴ははけないらしく、毛糸の靴下にサンダル履きといういでたちだ。 「私、生理は毎月きてますけど、やっぱり更年期なんでしょうか?」『突然カーッとほてるんですか?』「いいえ。いつでも上半身は暑がりなんです。走ったりすると、もっと暑くなって汗がダクダクですけど。」『更年期のホットフラッシュとはちょっと違うと思いますケド。』「先生、私冷やしたらいいのか暖めたらいいのか、どうしたらいいんでしょうか?」 冷え症の人は、悪化していくと下半身は冷えているのに、上半身はのぼせる“冷えのぼせ”と言う状態になる。こうなると、暖めると汗をかいて、逆に冷えるという悪循環に陥って、暖めたいのに暖められない状況になってしまうのだ。その上、自律神経そのものがバランスを崩しているため、さまざまな自律神経症状を伴うことが多い。Jさんも、話をしながら、しきりに胸のあたりを押さえてため息のような深呼吸をしている。『胸苦しいんですか?』「先生、私、どうも息が入っていかなくて。時々こうして深呼吸しないとだめなんですよね・・。」(うーん。やっぱりそうか・・。) 足を触ると、かなりのむくみがある。しかも、毛糸の靴下の上からでも、足がビショビショに濡れているのがわかる。(うーん。この辺が原因か・・。)『靴下、無理してはいてません?』「エッ?わかります?実はそうなんです。でも、冷えているから暖めたほうがいいと思って。」 冷えのぼせになると、冷え症とのぼせ性の、全く正反対の二重人格が混在していることになる。ただやみくもに暖めるのは逆効果で、のぼせているところは、上手に冷やして熱をのがし、冷えているところは、じっくりと暖めなければいけない。マメな対応が必要なのだ。不思議なことに、この正反対の治療を同時にできるのが、漢方薬の妙味とも言える。漢方薬には、何種類もの生薬が入っていて、下半身は暖め、上半身は冷やし、というのが同時にできるのだ。 しかし、その後Jさんは、ご主人の病気の看護で通えなくなった。 半年が過ぎた真冬のある日、都心でも小雪がまう寒い日、Jさんは久しぶりにやって来た。しかし、その格好に私は目が点になった。素足にサンダル、キャミソールのブラウス一枚。もちろん、下半身は鎧兜のように何枚もズボンを重ねて履いていた。 「先生、やっぱり真面目に薬飲みたいです。もう、カイロばかり張ってる毎日に疲れました。」 (やっと治療に専念できるようになったんだ!ここからリセットしないとね。) ![]() #
by meguro-kanpo
| 2014-08-09 16:53
2014年 06月 07日
その住所には見覚えがあった。
果たして、名前を呼ばれて入ってきた女性は、25歳。流行のファッションを身につけているけど、桃色のチークを入れたようなホッペは昔のまま。『もしかしてTちゃん?』「・・・ええ。」ひと呼吸置いて、ちょっとはずかしそうに答える様子も変わらない。「・・・仕事するようになってから、生理が不順になっちゃって。」 Tちゃんは、中学2年から5年間、クリニックに通っていた。朝になるとお腹が痛くなって、そのためしょっちゅう学校を休みがちだというのだ。初診のときは、お母さんとおばあちゃんが、もしや、心の病気じゃないか、いじめられているんじゃないかと、深刻な顔で付いてきたのが、つい昨日のように思い出される。 『どこが痛むの?』「・・・んー・・ここら辺。」『どんなふうに痛むの?』「・・・グギッと。」『ウンチの前?後?』「・・・」 朝にお腹が痛くなるというのは、大人でも子供でも、結構多い症状だが、子供の場合は、適当に対処する術がないから、大人より深刻だ。整腸剤などを飲んではみても、いっこうに変わらない。勿論多感な時期で、奥に心の問題がないかは見極めなければならない。そのため、口の重い子供達と何とかコミニュケーションをとろうと、自宅付近の名所旧跡など、ネタ探しに苦労する。だから、Tちゃんの住所も覚えていたのだ。 朝、お腹が痛むのは、もちろん、ストレスが関わっていることは多い。しかし、生まれながらの体質で胃腸が弱いというところが大元にある。胃腸が丈夫なら、ここに症状がでることはそうそうないのだ。漢方では、胃腸を丈夫にすることは、健康の1丁目1番地である。昔は胃腸が弱いことが、子供の生死を分ける時代だったから、それは、当然だ。 胃腸を丈夫にする!といっても、そんなに簡単ではない。漢方では、こういう場合、芍薬が強い見方となる。きれいな大輪の花を咲かせている芍薬だ。芍薬には、血行を良くしたり、腸管の痙攣を和らげたり、痛みを取る作用がある。虚弱な子供達を丈夫にするため、漢方薬デビューとして、芍薬を使ったものをじっくりと飲ませると、その後の体質を変えてくれるのだ。丈夫な胃腸なら、便通も整い、その結果、善玉菌が増え、腸内細菌のバランスも良くなっていくのは当然だ。腸の働きは、最近いろいろな研究で、免疫など、体のとても重要な部分を担っていることがわかった。 何でもかんでも『・・活』を付ければいいってもんじゃないけど、まさに『腸活のススメ』である。 Tちゃん、何とか腹痛を乗り越え、無事大学へ入学した。その後ぷっつり来なくなっていたが、生理が不順になって、久しぶりに思い出してくれたみたい。 脈を見ようと、手をとると、左手の薬指にプラチナのリングが光っている。 (・・そうかそうか、次は妊活ってわけね。) ![]() #
by meguro-kanpo
| 2014-06-07 15:05
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